感想『小澤征爾さんと、音楽について話をする』を読んで50代の毎日が変わったこと

本と映画とマンガ

 

村上春樹さんの本が好きで、これまでたくさん読んできたけれど、この本だけは縁遠いかなと思ってきました。だってクラシック聴かないから。


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クラシックに縁のない人生だった

 

もちろんまったく聴いたことがないというわけではありません。10年くらい前に『モーツァルト・ベスト』みたいなCDを買ったことはあるし、『シンフォニエッタ』は持っています。なぜピンポイントで『シンフォニエッタ』を持っているかというのは、村上春樹さんの本を好きな人なら分かりますよね?

 

そんな例外をのぞいては、これまでの50余年の人生で本腰を入れてクラシックを聴くということはありませんでした。

 

クラシックに対する印象は、恥ずかしながら、「聴くと眠くなる音楽」という程度でしかなかったのです。

 

そんな人間なので、さすがに村上春樹さんの本といえども、この本だけは読んでも内容が理解できないだろうし、おもしろくないだろうなと思っていたのです。

『小澤征爾さんと、音楽について話をする』の影響は大きかった

 

でもあるとき、この本を買ってみました。

 

それまで続けて読んでいた旅行記ものも一段落し、何かまだ読んでないものないかなと思っていたときにこの本が目についたのです。

 

結論からいうと、この本は、これまでに読んだ村上春樹さんの本の中でも、非常に大きな影響を僕に与えてくれることになりました。それは想像以上のものでした。

 

具体的にどんな影響かというと、今、僕の手元にはクラシックのCDが10枚と、LPレコードが17枚、そしてそれを聴くために買ったレコードプレーヤーがあります。

 

 

さらに外で聴くために、ワイヤレスのイヤホンも購入しました。

 

クラシックを聴かない日はありません。

 

・・・ということです。

『小澤征爾さんと、音楽について話をする』をくりかえし読んだ理由

 

なぜそんなことになったのか?この本のどこがそんなによかったのか?

 

そのことについてお話します。

 

『小澤征爾さんと、音楽について話をする』の読みやすさ

 

まず第一に読みやすかった。

 

もともと村上春樹さんの本が好きだからというのはもちろんあるとは思うんだけれど、わりと単調になりがちな対話形式の本にここまで惹きこまれたのはやはりその読みやすさが大きいと思います。

 

本文中に村上春樹さんが読まれる本の条件として「文章にリズムがあるかどうか」ということを述べているところがあって、実際この本はリズムのようなものがあって読みやすかった。

 

ふつう対話形式の本だと、2人の会話がえんえんとくりかえされていくんですが、それって意外に飽きてしまいますよね。僕はそれ、ありがちです。なので対話形式の本はあまり買いません。

 

でもこの本は、ところどころに、2人の会話の合間(あいま)や、会話の最中に起こっていることがさりげなくはさまれています。

 

といっても分からないと思うのでちょっとだけ引用します。

 

村上「いや、重いという感じはありませんよ、まったく」

小澤「そうかな」

レコードに針を落とす。オーケストラの序奏。

小澤「出だしはずいぶんおとなしいね」

 

村上「それは楽しみですね。どんな演奏になるんだろう」

レコードを裏返して、第二楽章をかける。その前に二人で熱いほうじ茶を飲み、餅を食べる。

村上「でもこの第二楽章って指揮するの難しくないですか?」

 

このような感じで、対話の間に、場面のちょっとした描写が入ります。流れている音楽についてのことが多いんですが、それ以外に、上記のような二人の行動や、食べ物についての描写がさらっと挟まれています。

 

これによって、単調になりがちな対話の文章が、まるでその場に居合わせているかのように、生き生きと感じられてくるのです。

 

ちなみに、これは想像なんですが、村上春樹さんの本を好きな人って、本の中に出てくる食べ物についての描写が好きってことないですか?

 

僕は好きです。小説やエッセイ、旅行記に食べ物の描写が出てくると、それらを思い浮かべながらじっくり読んでしまいます。

 

この本にも上のような感じでところどころに食べ物の描写が出てきます。実はそれは理由があってのことなのですが、それは実際に読んでみてください。

 

小澤征爾さんを好きになっていく

 

もともとクラシックに興味がなかったわけですから、小澤征爾さんの名前は知っていても、指揮者であるということ以外は何も知りませんでした。

 

そんな無知な自分でも、この本を読み進めていくうちに、小澤さんの正直な、飾らない語り口にどんどん惹きこまれていきました。

 

村上春樹さんがクラシックに造詣が深い(というかそれ以上)からということもあるのですが、聞かれたことに丁寧に答える様子がすごくよく伝わってきました。

 

小澤征爾さんって、こういう人だったんだ、ということを今さらながら知り、同時にこの人の指揮する演奏を聴いてみたいと思うようになるのに時間はかかりませんでした。

 

冒頭で、自分が購入したCDやレコードのことをお話しましたが、そのほとんどは小澤征爾さん指揮のものです。

 

『ボクの音楽武者修行』もおすすめ

 

ちょっと脇道にそれますが、この本もぜひ読んでみてください。


小澤征爾さんが若かりし頃に書いた本で、今読むといくぶん(というかかなり)古いところはあります。

 

でもこの本を読むと、『小澤征爾さんと、音楽について話をする』で語られている内容がつながってきます。

 

ここの話はこういうことだったんだなということが分かってきます。

 

小澤征爾さんのことをより深く知るにはもってこいの本なので、興味がわいた方は試しに読んでみてください。

 

きっと小澤征爾さんのことがますます好きになりますよ。

 

クラシックに、指揮者やオーケストラに興味がわいてくる

 

クラシックに興味がなかったですから、交響曲や協奏曲といった言葉の意味も知らないのはもちろん、世界にはたくさんの交響楽団が存在するということすら知りませんでした。

 

また、同じ曲でも指揮者によってぜんぜん違う演奏になるということも初めて知りました。とにかくズブの素人だったのです。

 

でもお二人の会話を聴いているうちにそういったことにどんどん興味がわいてきました。

 

これまではクラシック音楽というのは、世の中の上流階級の人がたしなむ音楽というイメージがあり、クラシックとは、ピアノとかヴァイオリンなんかを習うような人たちのもの、と思うところがありました(あるいはそうなのかもしれませんが)。

 

でも、この本を読んで、自分のような一般庶民でもクラシックを聴いたっていいんじゃないかと思うようになったのです。

 

だって優れた文学は誰だって接することができますよね。絵画や工芸品などの美術だって誰だって目にすることができます。

 

それらがすべて芸術だとすれば、芸術は世の中の人に開かれているわけです。音楽が芸術であることを否定する人はいないでしょう。

 

だとすれば、クラシック音楽のことを何も知らないまま一生を終えてはもったいないんじゃないか、そう思ったのです。

 

クラシック音楽のズブの素人である僕に、そんな気を起こさせてくれたのは、2人の会話と、それをリズムよく分かりやすく伝えてくれた村上春樹さんの文章だったのです。

村上春樹さんの本を好きな方ならおすすめします

 

この記事をここまで読んでくれた方はほぼ間違いなく村上春樹さんの本を好きな方だと思います。

 

ぜひ読んでみてください。

 

ひょっとしたらあなたも「クラシックを聴く人」になるかもしれませんよ。


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