猫を飼いたくて保護猫の里親のトライアルを始めたのですが、予定よりずっと早く、トライアル期間が終わる前に飼うことを断念することになりました。
わずか11日。
一番の理由は、わたしが家族の反対を押し切って飼い始めたこと。これが最初から最後まで重くのしかかりました。
具体的にどういうことなのか、猫を飼おうと思ったきっかけから順を追ってお伝えしていきますので、猫を飼おうかどうしようか迷っている人はぜひ読んでみてください。

とっても長いので目次で興味のあるところだけ読んでくださいね!
猫を飼うことに対する家族の反対
猫を飼いたいとは昔から思っていました。
でもちゃんと面倒見られるか不安でしたし、病気もするかもしれないし、死んでしまったら悲しいだろうし、やっぱりお金もかかるだろうということでずっとあきらめていたのです。住んでいたのがマンションということもありました。
でもこの本を読んで気持ちが一気に傾いたのです。
もう、いちころでした。
これはぜったい猫を飼うしかない
と思いました。
でも家族の反応は芳しいものではありませんでした。妻も、子供たちも。
「は?何言ってんの?」
「世話できんの?」
「誰が世話すんの?わたしはしないよ。ムリだから、そんなの。」
芳しいものではないというよりもみなが反対といったほうがいいでしょう。
でもそれはある程度予想できたことです。わたしは言いました。
「世話は自分でやるから大丈夫」
もちろん、わたしとてそんなことが100%できると思っていたわけではありません。会社勤めの身ですから夜が遅くなることもあれば、朝が早いこともあります。食事を用意するにしても、自分ひとりではやりきれないでしょう。
それでもやると言ったのには、実際に猫を飼いだしたら皆かわいいと思うようになって世話をしてくれるかもしれないという淡い期待があったからです。
そういう話はありますよね?反対していた人が最後は一番かわいがって世話をするようになった、ということが。
ですからわたしも同じことを信じたのです。
実際に猫を前にしたら必ずそういう気持ちになってくれる、全員でなくても、家族のうちの誰かがそういう気持ちになって面倒を見てくれると信じていたし、信じたいと思ったのです。
世話は自分でやるから大丈夫。
もともとわたしと家族の会話は非常に少なかったこともあり、事前にしっかりと話をすることもせず、わたしはそのひとことで家族から了承を取りつけた気になって次の行動に移ったのです。
保護猫の里親募集サイトの利用
ペットショップで買おうという気はなく、最初から保護猫を譲渡してくれる人から譲り受けようと思っていました。
その際に利用したのはこちらのサイトです。
「ペットのおうち」は猫に限らずペット全般、「ネコジルシ」は猫専門のコミュニティです。
猫の里親になるための手順
里親になるための手順、方法はどちらもほぼ同じです。
- 気に入った猫に応募
- 保護主さんと掲示板、メッセージボックスでやりとり
- 条件が合えば保護主さんの家で猫とお見合い
- 話がまとまり、自宅の準備が整ったらトライアル開始
- トライアル期間に問題がなければ正式譲渡
ここではわたしの場合を例にとってもう少しくわしく説明します。
猫の里親になるための条件
応募する際、条件がかなり細かく設定されているのでよく読むことが必要です。
- ペット飼育可の住居で完全室内飼いをすること
- 脱走対策を十分にとってくれること
- 年に1度、健康診断を兼ねたワクチン接種を行うこと
- 家族全員が猫の飼育に賛成であること
- 60歳以上の方、単身の男性は不可
猫によって多少違いはありますが、このあたりはだいたいどこも共通の項目です。
ほかにも、「小さな子供がいる家」や「家族全員が留守になる時間が長い家」はダメという猫もあるのでとにかく最初にじっくりと読んでみてください。
さらに「譲渡費用」もあります。これは保護主さんが猫を保護してからワクチンや去勢・避妊手術を受けさせていた場合の費用であることが多いです。金額は保護主さんによってまちまちなのでよく確認しておいたほうがいいでしょう。
これらをクリアできれば申し込みに移りますが、その際にいくつかの質問に答える必要があります。
- ペットの飼育経験
- 住宅環境
- 家族構成と年齢層
- 先住ペットの有無とその年齢・性格
- お留守番になる平均時間
- 掲載者による自宅訪問の可否
- 里親希望動機と終生愛情をもって育てる覚悟を伝える
- 年齢、性別
- 居住地域
- 住宅環境
- 先住ペットの有無
- 家族構成
- 応募のメッセージ
あと、自宅はほぼ間違いなく訪問されます。猫を届けてもらうことになりますので。
そしてトライアルを始めたら日々の報告をしてくださいという保護主さんも多いです。なので保護猫の里親になる場合は保護主さんとの密な連絡は避けられません。
これらのことが負担に感じられるようなら、保護猫の里親になることはあきらめたほうがいいでしょう。
猫の保護主さんとのやりとり
応募をすると保護主さんからの返信があります。
その際、注意すべきなのは「即レス」を期待しないこと。
サイト内のメッセージボックスを使ってのやりとりなので保護主さんもすぐ気がつくわけではありません。LINEやメールとは違います。
とか言いつつ、わたしもせっかちなほうなので、「ネコジルシ」で申し込みをして、丸一日返事がなかったとき、これは書類選考に落ちたかな?と思い別の猫に申し込みをしました。
そうしたら直後に最初の人から返事が来て慌てたということがあります。
だから気長に待ちましょう。
ここでは申し込みの際の質問に保護主さんが答えてくれたり、お互いの考えを伝えたりしたあと、お見合いの日程調整を行います。
保護猫とのお見合いは家族総出で?
実は里親になるための活動で一番頭を悩ませたのがこの点でした。
ほとんどの保護主さんがお見合いには家族といっしょに来てほしいと言います。全員が無理でもそのうちの誰かを——そうはいってもやはり夫婦でというのが一番ですが——連れていくことを求められます。
これは特にわたしが男だったからというのが理由のひとつかもしれません。男性の一人住まいは不可となっている猫が多いため、いくら口頭で家族がいると言っても、実際に会わなければ、譲渡する方としては不安が残るのでしょう。
それにくわえ、家族が本当に猫を飼うことに賛成なのかを知りたいということも大きいと思います。その点は理解できました。
・・・が、わたしの場合、家族を連れていくというのは大変難しい問題でした。
正直言ってみんなそんなに賛成しているわけじゃないし、それ以前にだれも父親のわたしと出かけようなんて酔狂な人はいないからです涙
しょうがないので保護主さんには家族との日程がどうしても合わないのでとりあえず今回だけはわたしひとりで行かせてくださいと頼み、了承をもらいました。
ただ、その後も保護主さんからは次はぜひ奥様もご一緒に来てくださいと言われましたね。
お見合いのときにどうしても家族を連れていくことができなければ、トライアルの引き渡しのときは必ず家族といっしょに迎えることが要求されます。どこかのタイミングで家族と会うことが必要なのです。
保護猫とのお見合いにお土産は必要?
これは本筋とは違う話なのですが・・・
お見合いに行くときにはたと迷うのが「手ぶらで行っていいの?」ですよね?わたしも迷いました。何か持っていったほうがいいの?って。
結局どうしたかというと、一人のときは手ぶらで、妻と二人のときは3,000円程度のお菓子を持っていきました。結果的には正解でした。先方の方もおみやげを用意してくれてましたから。
なのでこれは訪問するときの状況によります。
もしあなたが一人で訪問して保護主さんも一人であることが予想されるのなら特に手土産は不要でしょう。
おそらく家についたらすぐに猫のいる部屋に案内されて猫を前に話をすることになります。
わたしも一人のときは2件ともそうでした。おみやげがなくてバツの悪い思いをしたということはなかったですね。
3件目の妻と伺った家では保護主さん側も家族全員がいらっしゃって、お部屋でお茶も出してもらったので何も持っていかなかったらちょっと気まずかったかもしれません。
そういう状況が予想されるなら大げさなものじゃなくていいので何かを用意したほうがいいでしょうね。
保護猫とのお見合いのようす
実際に保護主さんの家に着いたらどんな形で猫と出会うのかというとわたしの場合は以下のようでした。
お目当ての猫はまだ人馴れしていないということでずっとケージの中。外から眺めるだけで終わりました。 部屋にケージがいくつも並び、他にもたくさんの猫がいました。
保護主さんのご友人も同席。
2匹とお見合い。 2匹とも最初はケージに入っていましたが話の途中で出してくれました。ただ、ケージを出たとたん1匹はこたつの下に隠れてしまい、もう1匹はキャットタワーの最上階に行ってしまったため、近くでじっくり見ることはできませんでした。
猫たちは自由な生活をしていて、お目当ての猫もすぐ近くで見ることができました。写真や動画も撮らせてもらったうえ、ねこじゃらしで遊んであげることもできたので猫のようすがとてもよくわかりました。
どの人にも共通するのは皆、猫のことを心から大事にしているんだなということ。わたしが会った方はみないい人ばかりでした。
猫の里親のトライアルへ
お見合いが成立したら次はいよいよ自宅でのトライアルになります。
準備については、家の中をどれくらいの状況にしておけばいいのかをお見合いのときに保護主さんに確認しておきましょう。
でないと、いざ当日になって猫を連れてきてもらったのに、柵などの脱走対策が十分でないからという理由でトライアル開始が延期されてしまいかねません。
そうならないためにも保護主さんとしっかりと話をしておきましょう。
猫を2匹飼うことに対する家族の猛反対
このころのわたしはもう暴走機関車のようになっていました。
とにかく猫、猫、猫。
幸せになるには猫しかない、と頭の中が猫だらけになっていたのです。結果的にそれが家族との溝をさらに深めることになってしまいました。
猫を飼うのは1匹も2匹もいっしょ?
保護猫の里親活動をする中で分かったのですが、
2匹いっしょにもらってくださいという保護主さんは多いです。
わたしも最初は1匹だけのつもりでいました。今まで一度もペットを飼ったことがないのですから。
ですが里親募集のサイトを見ていると、トップの写真には1匹だけが写っている猫でも、よくよく読んでみると、兄弟姉妹がいるのでいっしょにもらってくれるとうれしいですと書かれていることも多いのです。
わたしが気に入った猫もそうでした。
いや、でもムリだろ、2匹は・・・
なのでとりあえず、申し込みの段階で、「2匹は難しいので1匹だけで考えています、それでもよろしいですか?」という旨を伝えました。このときは保護主さんも了承してくれました。
でもね、伺うとね、
「2匹どうですか?」
という話にだんだんなっていくんですよね。
たしかに保護主さんの話ももっともなんです。
- この子たちは生まれたときから兄弟いっしょに過ごしている
- 1匹にするとさびしがるし、体調も崩すかもしれない
- 2匹いれば留守番させても平気だし運動不足にもならない
- 2匹いれば甘噛みなどの力の入れ加減も覚えられる
- 2匹いればどちらかが病気になりかけた場合、状態を比較できるので早期に気がつきやすい
聞いているとウンウン、たしかにそうだよなと思わされます。
そして必ず言われるのがこれ。
「1匹も2匹もいっしょです」
保護主さんのほとんどが何匹も猫を飼っていますから、そういう人たちから何度もそう言われるうちに自分自身も思うようになってしまうんですね。
1匹も2匹もいっしょだ———
——これはある意味では正しくて、ある意味ではぜんぜんそうではないということに後になってわたしは気づくことになります。
2匹飼うと言って家族から総スカン
2件目のお見合いでわたしは、「この猫にしよう!(2匹)」とほぼ心を決めていました。
兄弟ではないのですが、小さいころからずっといっしょに育っている生後約6ヶ月のオスとメス。
3日後ならわが家に連れて来られると保護主さんに言われ、わたしは有頂天になりました。
で、とりあえず家族には今度の土曜日に猫が来るよとLINEで2匹の写真を送ったのです。
これが元で家族から総スカンを食うことになるとはこのときは思いもしませんでした。
たしかに2匹飼うとは言っていなかったけど、1匹から2匹に変わったところでそんなに問題はないだろうとたかをくくっていたのです。
ただでさえ積極的な賛成を得ていないのに、それにくわえ一方的に2匹飼うと伝えたことで家族のわたしに対する信用はいよいよ木っ端みじんになりました。
この2匹問題はあとあと大きな問題になっていきました。
受験が終わるまでは猫をリビングに入れない
問題はまだありました。
実は中学生の息子が来春受験を控えていました。いわゆる受験生です。
ただ受験生とはいっても、ふだんでもスマホでYouTubeを見たり、ゲームをしたりしていることもあり、猫を飼ったところで本人にはそれほど影響はないだろうと思っていました。
事実、息子も、わたしが猫を飼うと言ったときそんなに強くは反対しませんでした。
そんな息子がここにきて言い出したのです。
「受験が終わるまでは猫をリビングに入れないでほしい」
リビングに置いてある教科書や参考書を猫に踏み荒らされたくないと言い出したのです、ここにきて。
マジか・・・と思いました。
わが家はごく普通の3LDKのマンションです。南側と北側に2部屋ずつ、その間にキッチンや風呂、トイレというごく一般的な作りです。
ケージも本来ならば南側のリビングに置きたかったのですが、世話をわたしがすることになっていたので、猫には申し訳ないけれどケージは北側の洋室①に置くつもりでいました。
わたしが1人で眠っている部屋です。寒くて暗い・・・
でもたまに明るいリビングに行かせてあげればそれでもいいかと思っていたところに息子のリビング無理宣言。
ということは受験が終わる2月半ばまでの3ヶ月間は、猫は北側の部屋のみで過ごさなければならないことになります。
・・・常識的に考えればこの時点ですでに破綻してますよね?猫を飼うことが。
でもわたしは分かりませんでした。分かろうとしなかったのかもしれません。
「分かった、じゃあ受験が終わるまではリビングには入れさせない」
という無茶な約束までしてしまったのです。
保護主さんからのトライアルのキャンセル
破綻していることを分かろうとしなかったわたしの代わりに保護主さんがそのことに気づきました。
猫を飼うのは息子さんの受験が終わってからにしたほうがいいです。
猫が家族である前に、息子さんも大事な家族です。ですからその息子さんの受験が終わって環境が整ってから、そのときまだ猫を飼いたいと思っていたらまた活動すればいいと思います。
しごくもっともな話です。保護主さんは間違ったことはひとつも言っていません。猫にも人にもこれが最善の方法ですよね?
でも、わたしはこの正しい意見に従えませんでした。
そんなに待てない。あと3ヶ月も待てない。
それより1日でも早く猫を飼いたい。
それが今の生活を変える唯一の方法だと思っていたわたしは息子の受験まで待つことができなかったのです。
父親失格ですね。
この失格オヤジは、受験が終わるまで待ったほうがいいという今回の保護主さんから譲ってもらうことをあきらめ、次の保護主さんを探しました。
3度目の保護猫とのお見合い
3件目の保護主さんには「1匹で考えています」ということをはっきり伝えました。
というのも家族から、
「誰にも相談もなく、勝手に2匹にするなんて信じられない」「1匹ならまだしも2匹は絶対反対」
「とにかく私は世話しない」
という集中砲火を浴びたことでようやくわたしも自分の非に気づき、次は1匹で活動しようと決めたわけです。
この3件目の方は、お見合いには必ず家族の人といっしょに来てくださいということだったので、妻に頭を下げまくり、なんとか2人でお見合いに行くことができました。
そして猫と対面。そうしたら、
かわいいの、なんの。
わたし自身は『ネコジルシ』の生後6ヶ月のメスの子に惹かれて申し込んだのですけど、同じ写真に写っていたオスの子も実際に会ってみるとこれがまたかわいい。オスならではの活発な動きがとても面白かった。
わたしたちが部屋に入っても逃げることなく、まわりを歩いてみたり、ねこじゃらしで遊んでくれたりと、子猫の魅力満開で接してくれたのです。
で、2匹とも小さいころからいっしょに育ってきただけあって仲良し。
保護主さんからも、男の子はともかく女の子の方はすごくさびしがりやなので、なんとか2匹いっしょにもらってくれないかということを再三言われました。
この時点でわたしの心は2匹に決まっていました。が、さすがにすぐにそれを口に出すわけにはいきません。子どもとの約束もあります。
なのでいったん回答を保留しつつ、でも内心は強く2匹飼いに向かって前進しながら保護主さんの家を後にしたのです。
トライアル期間で1匹か2匹か決めるということ
妻は実際に猫と会い、保護主さん夫婦のお話を聞いたことで、飼うことに関しては以前ほど否定的ではなくなりました。
2匹にするかどうかはわたしたちだけでは決められないから子供たちの意見も聞きましょうというのが妻の考えでした。
家に帰って子供たちに何と言って説得するか。いろいろ考えてみましたが、やはり方法はひとつしかありませんでした。
これしかありませんでした。
わたしは子供たちにそのことを伝えました。子供はうさんくさげにわたしの言うことを聞き、どうせ勢いで2匹に持っていくんじゃないの?みたいなことを言ってきました。
これはこれでショックでしたね。いかに信用がないか。
そんなことは絶対にしないとわたしは答え、なんとか2匹でトライアルを迎えることに了承を取りつけたのです。
もちろんウソじゃありません。トライアルでもし家族がやっぱり2匹は無理だという結論になればどちらか1匹にするつもりでした。
そして保護主さんに2匹でトライアルにのぞむことを伝えました。1週間後に子猫2匹を連れて来てくれることになったのです。
わたしは胸をなでおろしました。ここまで長かったですが、なんとか2匹でのトライアルまでこぎつけることができました。
あとはやるべきことをやるだけです。目的がはっきりしたのでわたしは具体的な行動を開始しました。
里親のトライアルの準備
トライアルといってもやることは普通に飼うことと変わらないわけですから、それ相応の準備が必要です。
猫の脱走防止柵
どの保護主さんもこの点をすごく強調されるので柵などの対策は必須でした。
ネットで調べると、100円ショップを利用すれば1万円以下で柵を作ることが可能と載っていたので近所の100円ショップでワイヤーネットを購入。
まずはケージを置く部屋の窓枠にとりつけました。それが上の写真です。
あと絶対に必要なのが玄関のドア前ですが、玄関は人が見るところでもありますから、できればそれなりに見栄えのいいものをつけたいですね。
猫の飼い方の本を読む
「はじめての~」は総合的な内容です。
その分、最初の方に「世界の猫図鑑」なんてページもありますが、保護猫を飼おうという人にはあまり必要がないですね。
「0才から~」のほうは猫の「食べること」「トイレ」「ビヘイバープロブレム(問題行動)」について多くのページが割かれています。病気についての記述も「はじめての~」よりくわしく書かれています。
主張もちょっとずつ違って、「はじめての~」では爪切りを推奨していますが、「0才から~」では爪切りを猫との関係性を悪化させるものとして勧めていません。
ですので内容は似ているようで、意外に住みわけができている本です。このあたりはご参考までに。
猫カフェに行く
猫カフェへ行ったのはひとつには猫と触れ合いたいというのが理由でしたが、もうひとつには猫アレルギーでないかを確認するためでした。
というのもわたしは立派なアレルギー体質なのです。
30年来の花粉症にくわえ、子供のころは「そばアレルギー」もありました。
なので猫アレルギーも否定できません。
その手っ取り早い確認法として猫カフェに行ったわけです。
住んでいる場所から行けるところということで、横浜にある3件の猫カフェに行きました。その中でもよかったのはここです。
これより前に行った2件の猫カフェでは一元の客であるわたしに猫はほとんど近づいてこず、手持ち無沙汰になってすぐに帰ってしまいました。
が、ねこっ茶では猫が競って膝に乗ってくれようとするのです。驚きました。
こんな猫カフェほかにありません。横浜近辺で猫と触れ合いたい人はぜひ行ってみてください。
ただし初めて行く場合は予約が必要です。平日は2時からなのでご注意を。
お店に着くと最初スタッフの人(人スタッフ)から長い説明があります。ルールとか決まりごとを細かく教えてもらいます。
そして人スタッフからの説明が終わると次は猫スタッフを交えての説明になります。猫スタッフは早くも膝に乗ってきます。
とちゅうで質問されたりもするので(もちろん質問は人スタッフからです)しっかり聞いてちゃんと自分の頭で考えないといけません。
これが終わればあとは自由です。わたしが行ったときは他にお客さんがいなかったのでスタッフの人と説明の延長のようにずっと話をしていました。
そのとき、こんなことを聞いてみたんです。
「ペットを飼うの初めてなんですが、2匹はやっぱり大変ですか?」
そうするとスタッフの人は少し考えた後、こう答えました。
「2匹だとすべてが2倍になります」
このときは、そうですよね~、で終わったのですが、これがいかに的を得た答えであるか、あとになって自分自身が強く実感することになります。
猫アレルギーの血液検査
猫カフェに行っても平気でしたし、保護主さんの家で猫と会っても平気でしたから、自分には猫アレルギーはなかったんだと思いました。
ところがです。
妻と出かけた3件目のお見合いから家に帰ってくると、右腕の手首とひじの間が赤くなっていることに気づきました。しかも赤いだけでなくかゆいのです。
よく見たらぷつぷつのようなものができていて、一見、じんましんのようにも見えました。
焦りましたね、このときは。
この期に及んで、実は自分が猫アレルギーだったなんて笑い話にもなりません。保護主さんにも説明のしようがありません。
でも現実に赤くなっているし、かゆい。
これは放っておけないと思ったわたしは翌日すぐに病院のアレルギー科に行き、そこで血液検査を受けました。
結果が出るのに5日ほどかかるとのこと。
そこからの5日間はまさに祈るような気持ちでした。これで陽性だったらこれまでの苦労が水の泡です。さすがにアレルギーをおしてまで飼う勇気はなかったですから。
そして5日後の診察室。先生は開口一番に言いました。
「特に出てないですね~」
ほんとですか?と差しだされた結果をのぞきこむとそこにはたしかに「―(マイナス)」と書かれていました。
よかったあ~
ホッとして、身体から力が抜けるようでした。
猫のトライアルを始めるわずか2日前のことでした。
ねこグッズのおすすめ品を購入
お見合いが成立したあと大急ぎで必要なものを買い集めました。
トライアル開始まで時間がなかったので最低限必要なものに限ってですが、選ぶのは楽しかったですね。
これについては後ほど使用感とあわせて紹介していきます。
猫の里親のトライアル開始
いよいよ待ちに待ったトライアルです。ですが・・・
不安なトライアル前夜
猫ちゃんが来る前日の夜は、うれしいという思いもありましたがそれ以上に、
自分はひょっとしたらとんでもないことを始めようとしているんじゃないだろうか?
という不安もありました。
だってネットで調べてみるとたくさん出ているんですよ。
- うるさくて夜眠れない
- うんちやおしっこをあちこちにしてしまう
- 甘噛みができずに生傷が絶えない
- ペットフードを食べない
- ぜんぜんなついてくれない
とにかくもう飼いたくない、手放したいという話もたくさんあって、もし自分がそう思うようになってしまったらどうしようと考えるとだんだん不安になってきてしまったのです。
でも今さらどうしようもありません。泣いても笑っても明日、猫はやってくるのです。これは一種のマリッジブルーのようなものだと自分を納得させその日は眠りにつきました。
2匹の猫がやってきた!
ついにその日がきました。
お昼過ぎ、保護主さん夫婦がやってきました。
キャリーケースを覗かせてもらうと、たしかにいます、2匹の猫。ケースの隙間から不安そうにこちらを見上げています。
か、かわいい・・・
それから保護主さんは車からケージをおろしました。
今回、トライアルの間は保護主さんがケージを貸してくれました。
他の保護主さんの場合は分かりませんので、この点についてはお見合いのときに確認しておいてください。
「こちらです」とわたしが案内したのはマンションの北側の1室。晴れた日の日中にもかかわらず、光が入らず、暗い感じのする部屋でした。
保護主さんが猫を飼っていた明るくて広い部屋とは似ても似つかないような場所です。
ご夫婦は何も言いませんでした。内心驚いていたことと思います。こんな部屋なの・・・?って。
でもとりあえずそこでケージを組み立ててから、そのあとリビングでキャリーケースから猫を出してあげました。
まだ目の前に保護主さん夫婦がいる安心感もあったのでしょう、こわごわとあたりを探検したり、ときどきくっついて何かをしゃべっているようでした。
うれしかったですね~、このときは。
自分の家の中を猫が歩いている不思議。やっとここまでこれた満足感でいっぱいでした。
保護主さんが帰るとき、2匹はケージに入れられました。
ここで一気に不安になったようです。それはまるで、
と言っているように見えました。
わたしはケージをのぞきこみました。「早くうちに慣れてね」
中からは2匹のかわいい子猫がこちらのようすを伺っています。それはひとことで言って、
なんという幸せ!!
としか表現できないものでした。
こうして念願の猫と暮らす生活が始まったわけです。
2匹の子猫の性格について
ここであらためて2匹の猫について紹介します。
アオ(メス、サバトラ、生後7ヶ月)
マル(オス、チャトラ、生後7ヶ月)
生後半月を過ぎているので身体はそれなりの大きさです。6ヶ月だといかにも子猫という感じではありません。
里親に応募する人の中には、6ヶ月だとまだまだ小さいだろうと思っていて、意外に大きいのを知ってびっくりする人もいるそうです。
ただ、最初衰弱していたという影響なのか、まるまるとしているという感じではなかったですね。特にマルは少しやせている感じがしました。
そしてたしかにアオは甘えん坊でさびしがりやでした。保護主さんが2匹でどうですかというのもうなずけました。
といってもその日からわたしたちにゴロゴロ、スリスリしてくれたわけではありません。最初は緊張で固まっていました。
トライアル初日~3日目くらいまでの状況
保護主さんの家では元気いっぱいに走り回っていた2匹も、新しい環境(暗くて狭い)に来てすっかり縮こまっている様子でした。
ここではトライアル序盤、3日目くらいまでのようすを紹介します。
里親トライアルで準備したグッズは使ってくれた?
保護主さんが帰ったあと、最初のイベント?は食事です。
食事用のお皿はこちらを用意していました。
2匹なのでピンクとブルーの2つ用意しました。付属のボトルを挿し込んでおけば一定量、水が保たれる仕組みになっています。
でも結局それは一度も使わなかったですね・・・ボトルごと倒されそうな気がして。
- とにかく洗いやすい
- ステンレスの皿だけだとぐらつくがプラスチックの容器に入れると安定
- すべり止めつき
デメリットは特に思いつきません。上に書いたようにひょっとしたら立てたペットボトルごと倒されてしまうこともあるかな?というくらいでしょうか。
で、肝心の食事です。
マルは食べてくれました!
・・・よかった。
間近で見ていると、猫がごはんを食べている姿っていやされますね~
けっこう無防備な感じがして、それはとりあえず安心を感じてくれているように思えてホッとします。
でも・・・マルは食べてくれましたが、アオちゃんは・・・
お皿に近寄っては来るのですが食べません。目の前にごはんがあるのに・・・
やっぱり環境が変わったことが影響しているのでしょう。
アオちゃん、早く食べられるようになってね。
翌日の朝も同じでした。マルは食べるけどアオちゃんは食べない。水は少し飲んでくれました。
いったいいつ食べるようになってくれるんだろう?不安になります。
でもこの日は仕事です。後ろ髪を引かれるような思いで出勤しました。
仕事中も考えるのは2匹のことばかり。
これまでは、あ~仕事つまらないな~、早く終わらないかな~、なんて思ったりしていたのですが、この日からは——もちろん早く帰りたいのはやまやまなのですが——2匹のためにもがんばらなきゃなと思うようにもなりました。仕事に張りが出てくるっていうか。
で、仕事が終わったら飛ぶように家に帰りました。
家では妻と息子が2匹と遊んでくれていました。
聞くとなんとアオちゃんがごはんを食べてくれたとのこと!
ほんと!!と喜びかけたのもつかの間、妻の口から出てきたのは「でもそのあと吐いた」。
え・・・?
聞くと、晩ごはんを食べたあとに細長いソーセージのように胃の中のものを大量に出したとのこと。びっくりしました。
さらに次の日の朝も、起きてちょっと遊んだあとアオちゃんは吐きそうになりました。ただ、吐くものがないのか、苦しそうにしているだけでした。見ているのがつらかったです。
あとで保護主さんに聞いてみたらたぶんストレスだろうと言われました。
やっぱり環境が変わったことがアオちゃんに大きなストレスを与えていたのでしょう。その原因をつくったわたしとしては、ただただ早く慣れてくれることを祈るしかできません。
次の日も仕事でした。
昨日と同じように急いで家に帰ってきたら今度は2匹ともウンチをしたといういいニュース。
よかった・・・とりあえずトイレに慣れてきてくれたのかもしれません。
もともといちばん心配だったのはトイレです。猫は自分でちゃんと用を足すとはいうものの、環境が変わるとおしっこやウンチしなくなるとも聞いていましたから。
ちなみに用意していたのはこちらです。
これはよくできているトイレですね。本当に臭くない。
もちろんウンチ自体は臭いますが、とり除いてしまえば臭いません。おしっこは下のシートに吸収されます。チップの上に鼻を近づけても臭くありません。ほのかに木のにおいがします。
ただ、シートに関しては、『1週間持つ』と書いてありますが実際はそんなには持たないでしょう。1日たつとシートのあちこちにおしっこのあとができています。
2匹だったのでなおさらですが、シートは毎日取り換えました。
初めてのトイレで迷っているなら『ニャンとも清潔トイレ』おすすめです。
あとで別の部屋用にもうひとつふやしました。
ただ、『ニャンとも』に慣れていたせいなのか、こちらはすぐには使ってくれませんでした。
おまけにアオちゃんがチップを食べようとしたのであまり出番はなかったです。
揃えたグッズでもうひとつよかったのはこれ。
朝、ケージから出すと2匹ともこれで爪とぎをするのが日課になっていました。
これがよくできているのか、それとも2匹がおりこうなのか、とにかくこのタワーがあるおかげでトライアル期間中、一度も壁で爪とぎをされませんでした。
そんなに背の高いものじゃないので大きな猫にはちょっと小さいかもしれませんがコスパはいいんじゃないでしょうか。
追記:大きいのも出てました。
よかったんですけど、ひとつだけ伝えることが。
1ヵ所こんなふうになってしまいました。
耐久性にやや劣るのかな?でもこれ以外では爪とぎしてませんからね。
ということで星4つというところでしょう。
また追記:こちらも交換用が出てました。
トライアルにも慣れてきて
3,4日目くらいから2匹ともしだいににわが家に慣れてきました。
リビングには行くことができないのですが、そのとなりの和室ならかまわないということだったのでそこで2匹を解放させてあげました。こちらは明るく、暖かく、ベランダから外も見えます。
初めての場所に最初はおそるおそるだった2匹もだんだん活発に遊びだしました。
ふと思い立って抱っこして遠くを見せてあげました。
走っている車や信号が珍しいのか、2匹ともまったく動かず、じっと見つめていました。
とても幸せなひとときでした。
アオちゃんは尻尾を立てて、わたしや子どもにスリスリし、ごろごろと喉を鳴らすようになりました。うれしかったなァ。
猫が幸せを与えてくれるというのは本当なんだなと思いました。
このトライアルに慣れてきてくれた頃がいちばん楽しく、いちばん幸せだったのではないかと思います。
子猫の夜の運動会
あるときは夜、ケージの扉を開けたままにして眠りました。
しばらくは静かにしているのですが、やがて始まります。
夜の大運動会。
6畳の小さな部屋の中をものすごい勢いで走り回ります。電気も消しているのによくそんなに早く走れるなと感心するくらいです。
最初は私の布団のまわりを走っている2匹も、しだいにヒートアップして布団の上を走りだします。お腹の上もおかまいなし。思わず「うぐっ」と声が出ます。
顔の上を走られたら爪で傷だらけになりそうなので布団に顔をうずめて眠りました。その上をお構いなしに走り回る2匹。
眠れるわけねー!!
と思いつつ、実はその状態を楽しんでいる自分がいました。アオちゃんとマルの楽し気な気持ちが伝わってきたのかもしれません。
それでもいつしか運動会も終わったようで気がついたら朝になり、2匹ともケージの中で眠っていました。
家族のストレスと猫たちのストレス
こうして書いていると幸せそのもの、楽しいばかりの里親トライアルにも思えますが、1週間をすぎたあたりからしだいにほころびが見え始めました。
子猫を2匹飼うことの大変さ
猫カフェのスタッフさんが言っていた、
2匹になるとすべてが2倍
というのはウソじゃありませんでした。
ペット初体験のわが家にとって、いきなり猫を2匹招き入れるというのはやはり想像以上にバーが高いものでした。
ここではそのことについてお伝えします。
トイレの世話が2倍
2倍になっていちばん大変だったのはトイレです。
特に朝。
2匹が時間差でウンチします。
このウンチをなんとしても家を出る前に掃除してしまいたいのです。
- なぜなら家族はトイレの世話をしないから。
- 猫の世話は自分がやると宣言しているから。
だから今さら家族に頼むわけにはいきません。頼んでもしてくれないでしょう。
ごはんを食べてしばらくすると、マルかアオちゃんがトイレに行きます。そこでウンチ。
わたしはウンチを片付けます。
でももう片方がウンチしていません。
早くして、早くウンチしてと願ってもなかなかしてくれない。
トイレに座ったから、お、ウンチ?と思ってもおしっこだったり。
そうしている間に家を出る時間が迫ってくる。あと5分、3分、1分・・・!
もうこれ以上待てない!タイムリミット!あとはしょうがないから家に帰ってから・・・!と思っていると目の前でウンチ。
絶望的な気分になりながらウンチを掘るわたし。スーツもコートも着たままで、ウンチとチップを分別して処理し、大慌てで家を出ていきます。
2匹だと部屋から出てしまう
これもわが家の飼育環境に問題があったから起こったことです。というのも、
基本、ケージの部屋から出すことができない。
これがあまりにも難しかった。
最初こそ部屋の外へは出ようとしませんでしたが、そのドアからわたしや妻や子どもが出入りするのを毎回見ているわけです。外に出たがるようになるのに時間はかかりませんでした。
時間に余裕のあるときなら出してあげることもできますが、仕事の日はそうはいきません。わたしが家を出るときには2匹をケージに入れておかねばならないのです。
ウンチの世話と同じで2匹いるとケージに戻すのも2倍大変です。いや、この場合は2倍以上でした。
なぜなら1匹を部屋に戻しても、その間にもう1匹がスルリと出ていってしまうから。
それと同じでケージに入れるのも、1匹はなんとか入れられてももう1匹が入れられない。やっとのことでつかまえてケージに入れようとしても、ケージの扉を開けたすきにもう1匹がまたスルリ。
これなどはふつうに飼っていたらする必要のない苦労です。
でもわが家ではそうはいかなかった。
世話はわたしがする。
リビングには入れない。
などという無茶な約束をしたせいで、どうにもこうにもならなくなってきてしまいました。
これはすべてわたしの責任でした。わたしがこんな状況で飼うことを推し進めた結果、このようなことになってしまったのです。
猫を飼うことによる家族のストレス
この状況にわたしもそうですが、家族にも少しずつ影響が出てきました。
妻が疲れを訴え始めました。
無理もありません。
世話はわたしがすると言っておきながら、結局一人でやりきれるものではなく、その結果、手伝わざるをえなくなったのは妻でした。
子供はきまぐれで、いつも面倒を見てくれるわけではありません。もちろんトイレの掃除などは絶対にやりません。
それをやってくれたのは他ならぬ妻です。
わたしの帰りが遅い時もごはんをあげて、お皿を洗ってくれるのは妻でした。ドアを開けるたびに外に出ようとする2匹をなんとかなだめながらお世話をしてくれていたのです。
でもそれが少しずつ妻の負担になり、疲れが蓄積されていったのでしょう。
「これから先、やっていけるかな」というひとことに妻の本心が現れていたと思います。
妻だけではありません。
受験生の息子も、最初こそ猫がいることにうれしさのような感情を口にしてくれることもありましたが、でもやはりまだ中学生です。
ユーチューブで見てる限りはかわいい猫も、実際にいっしょに暮らすとかわいいだけでは済まされないということがまだ理解できません。理解しようという気もない。
猫の爪でイスがケバだってきたり、机の上のものを落とされることに対して不平を漏らすようになってくるとともに、次第に猫と遊ぶことも少なくなっていったのです。
唯一救いだったのは、最初は関心をもたず、というかいちばん反対していた娘が遊んでくれるようになったこと。
保護主さんが言っていた通り、女の子は猫から好かれやすいようで、娘にはアオちゃんもマルもすぐにスリスリするようになり、膝で眠るまでになりました。
自由に暮らせないことによる猫のストレス
トライアルも1週間をすぎたあたりから2匹にこれまでと違う行動が目立つようになってきました。
あきらかにちょっとおかしいな、という行動です。
アオちゃんはいろいろなものをかじりまくるようになりました。
それまでもそういうことはあったのですが、この時期のは執着の仕方が普通じゃなかったです。いつまでもひたすら噛み続ける。
たとえばこれは爪とぎタワーのネズミ。
ネズミの後ろ半分がはがされ、中のプラスチックも穴が開いた無残な姿になっています。
最初の頃はぜったいにやらなかったようなことでした。
ストレスだ、ということはすぐに分かりました。
家族が不在の昼間、そして夜の間ずっとケージの中に入れられ、たまに出してもらっても狭い部屋を出ることができないという不自由な生活に精神的なバランスを欠いてしまったのでしょう。
でも・・・どうすることもできませんでした。
出してあげられるのはわたしが休みの日だけ。それ以外の日はケージで過ごすしかないのです。
この日も朝、家を出る前に2匹をケージに入れました。つらいけどしょうがないと思って・・・
そうしたらなんと、
アオちゃんがケージの間から手を伸ばしてくるじゃありませんか。
ケージの隙間から精一杯、手をわたしの方に伸ばしながらニャーン、ニャーンと鳴くのです。
わたしはつい自分の手を差し出しました。
そうしたらアオちゃんは爪を出さず、そっとその手をわたしの手に重ねたのです。とても柔らかい手でした。
辛くて涙が出そうになりました。
こんなに慕ってくれるのに自分は2匹をケージに閉じ込めたまま会社に行こうとしている。
出してあげたい。せめてケージの外に出してあげたい。
でも部屋には息子の机があります。猫に乗られるのがいやでガムテープをあちこちに貼っている。
ここで出したらまた机の上をぐちゃぐちゃにしてしまうだろうことを考えると、ケージから出してあげることもできませんでした。
俺はバカだ————
いったい何のために猫を飼おうとしたのか。
こんな状態で猫を飼って幸せにできると思ったのか。
俺はアオちゃんとマルを不幸にしているだけじゃないのか———
そう思うと、2匹がかわいそうでなりませんでした。君たちはいったい何のためにわが家に来たんだろう?
ごめんね、アオちゃん。ごめんね、マル。
もうわたしにはそれしか言えませんでした。
里親トライアルの終了
あれはトライアルを始めてから10日目のことでした。
仕事から帰って、いつものようにケージの部屋に入ると妻と息子がいました。
わたしはてっきり遊んでくれていたものと思い、お礼を言おうとしたのですが何か様子がへんです。2人とも押し黙っている。
そのときわたしは2人のまわりに散乱しているものに気がつきました。
それは息子の机の棚にはさんであった、クラスの集合写真が載っている書類でした。
いや、書類であったものでした。
いまやそれは細かく切り刻まれた破片になっていました。
わたしは何が起こったのかを察しました。
「もうムリだわ」と息子は言いました。多くを語りませんでしたが息子の中では完全に猫から気持ちが離れていることが分かりました。
無理もありません。PTAの書類ならいざしらず、大事なクラスの写真がビリビリになってしまったのです。
わたしは何も言えませんでした。
アオちゃんかマルのどちらかがやってしまったものでしょう。
もちろん2匹には何の責任もありません。責任はすべて、こんな環境でトライアルに突き進んだわたしにあります。
これは彼らからの精一杯の訴えだったのでしょう。
アオちゃんもマルも明らかに身体や精神に異常をきたしつつありました。
猫も人間も、もう限界まで来てしまったのです。
これ以上ここで飼い続けることはお互いに不幸しか生みださないということからもはや目をそらすことはできませんでした。
決断すべきときが来ていました。
その夜、わたしは長い時間をかけて保護主さんに送るべき文章を書きました。書いては消し、書いては消し、をくりかえし、何度も送るのを迷いながら。
トライアルを断念します———
お別れ
ここからはあっというまでした。
アオちゃんとマルの現状を知った保護主さんの動きは速かった。
無理もありません。
衰弱しているところから必死で育ててきた子供たちが里親のところで不自由な生活を強いられ、ストレスから異常行動を起こしていると聞けば、すぐにでも助けに行こうと考えるのは当然のことです。
わたしはまだ数日は猶予があるかなと思っていましたが、保護主さんの2匹を思う気持ちは非常に強く、メールを送った次の日には引き取りに来られることになりました。
出勤中にそのことを知ったわたしは大急ぎで帰ってきてケージをのぞきました。
アオちゃんとマルが同じように手を伸ばしてきます。いつのまにかアオちゃんだけでなく、マルも手を出してくるようになっていました。
あと30分もすれば保護主さんがやってきます。わたしは2匹をケージから出してあげました。
そろりと出てきたアオちゃんとマルにわたしは話しかけました。
ごめんね、アオちゃん。ごめんね、マル。
今までありがとうね。
短い間だったけど、うちに来てくれて本当にありがとうね。
でも本当に、本当にごめんね。
それを言うのがわたしには精一杯でした。
アオちゃんもマルもニャーン、ニャーンと鳴いていました。
時間は迫ってきます。わたしはケージを畳む作業に入り、ほぼ準備ができたところで保護主さんがやってきました。
本来なら自由な生活をさせてあげられなかったわたしに言いたいことはたくさんあるはずなのに、保護主さんは何も言いませんでした。逆に温かい言葉をかけてもらったくらいでした。
わたしはこんなことになってしまったことを詫び、そしてお礼の気持ちを伝えました。保護主さんのおかげでアオちゃんとマルに会うことができたのですから。
11日前、トライアルに連れてこられたときと同じようにキャリーケースに入れられたアオちゃんとマルはそのまま保護主さんの車に乗せられました。
そして2匹は元いた家に帰っていきました———
ありがとう
部屋はがらんどうのようになりました。
ケージが置いてあったところにはもう何もありません。
アオちゃんとマルが去ってから心の中にぽっかりと穴があいたようでした。
少し前まではこの家に猫がいたということが今となっては夢だったのではないかとすら感じます。
でもあのとき着ていたスーツやコートのすそに今でもわずかに猫の毛がついているのを見つけることがあります。そんなとき、ああ、やっぱりうちにも猫がいたんだなと感じます。
猫を飼いたいというわたしの夢はかなうことはありませんでしたが、でも2匹が与えてくれたものは少なくはありませんでした。
世話は自分ひとりでやると言っておきながら、結局そんなことができるわけもなく、そこを助けてくれたのは妻でした。子供たちも、できる範囲内で、お世話を手伝ってくれました。
今までわたしは自分のやりたいことばかり考え、家族のことをあまり顧みなかったのですが、今回のことをきっかけに考えが変わりました。
やはり家族は助け合って生きていかないといけない。
だからあれ以来、家のなかでできることを率先してやるようになりました。
会話も少しずつふえてきました。以前はほとんどなかったですからね。
これも2匹のおかげです。
夜、ふとんに入り、眠りにつくとき、わたしはケージの置いてあった場所に向かってそっと話しかけます。そうすると2匹があのときのようにこちらをのぞいて見てくれる気がするんです。
アオちゃん。
マル。
———大変長いものになってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント
はじめまして。
今、トライアル中で気持ちが大きく揺れている中、こちらへたどり着きました。
猫が好きで、でも実家住まいの時には家族皆が動物を飼うのには反対派で、でも一生のうち一度は猫を飼ってみたい、とずっと思っていました。
結婚し、子供ができなければ動物を飼いたいなとも考えていました。実際子供はやってこなかったので、今まで外出以外の家での時間は一人で過ごしていました。
主人は若干猫アレルギーがあるにも関わらず、飼ってもいいよというので長い間躊躇していたのですが、先日希望に非常に近い猫と巡りあえたので心を決めました。
猫のために主人が自分の勉強部屋をつぶしてくれてまで、猫を迎える準備をしました。
やってきた猫はいたずらもせず、お見合いしに行った日からよく懐く子だったのでなんの問題もないはずなのに、広い世界が好きで好奇心がある性格なので、一部屋に閉じ込めておくのは可哀そうかなと思ったり、かといってアレルギーの心配もあるのでリビングにまで範囲拡大させるとどうなるかと思ったり、今後のことを思うと果たして拙宅で猫を飼い続けることは猫と人間お互いに良いことなのか?という疑問も出てきて涙があふれます。うまくやっていける自信も今のところ確たるものではない気がしています。
動物を飼うことは可哀そうなことなんだよ、と主人に言われたことや(犬派にもかかわらず猫もかわいがってくれています)、勉強部屋をつぶしてまで協力してくれているので余計にどうしたものかと考えています。アレルギーでもうまくやっている方もたくさんいると思いますが。どちらかの決断を早いうちにしなければならないですが…
長文失礼しました。こちらのブログを拝見できて感謝しています。ありがとうございました。
はじめまして。ご丁寧なコメントをいただきありがとうございます。と同時に返信が遅くなって申し訳ありません。
じっくりと読ませていただきました。
今トライアル中で、いろいろな要因があって悩んでいらっしゃるんですね。
でもコメントを読ませていただいたかぎりでは、希望に非常に近いという猫ちゃんですし、ご主人様に関しても、ご自身の部屋をあけてくれるなんてとても協力的で、nekonekoさんの気持ちをすごく大事にしてくれる方のように感じます。
わたしの場合は家族の反対を最後まで翻意させることができませんでしたが、そうでなかったら間違いなくいっしょに暮していたと思います。よく保護猫の里親を募集する人がその条件の中に「家族全員が猫を飼うことに賛成であること」とあげているのはつまりはこういうことなんだなとあらためて感じました。そういう意味ではnekonekoさんの場合は条件をクリアされているのではないでしょうか。
あとはお部屋のことですが、いずれ猫ちゃんが部屋から出たがるようになってくるかもしれませんね。そうなった場合、出してあげることができるのかどうか。わが家でも、保護主さんからしきりに、リビングにも行かせてあげてほしいと言われました。せめてゲージを置いてある部屋が日の当たる部屋ならよかったのですが、わが家の場合はあまりにも暗すぎて…
お部屋のことは悩ましいですよね。
ただ、nekonekoさんが書かれていた、「うまくやっていける自信」というのはきっと最初からあるものではなくて、いっしょに生活をしていく中で育っていくものであるような気がします。
わが家では、たった11日間という非常に短い間でしたが、2匹の猫がもたらしてくれたものは決して小さくなかったです。いろいろと大変ながらもとても濃密な時間を過ごすことができました。そして今でも2匹の写真を見ると切ない気持ちになります。猫ってすごいですね。
なんだか全然ちゃんとしたお返事になっていませんが、nekonekoさんがご主人様と、そしてひょっとしたら猫ちゃんと、これから先、幸せに暮らしていかれることを願っています。
ありがとうございました。
たびたび失礼します。さきほどは自分のことばかりでしたので、追伸です。
ユウさんが猫を飼うために最大限のご尽力をなされたこと、こちらのブログでとてもよく伝わりました。そのことをお伝えしたく。。。
ユウさん
お忙しいところご丁寧にお返事をありがとうございました。
主人が理解があることは、本当にありがたいと思っています。
その後、猫に血便が見られたり、腕の毛繕いが激しくおハゲになってしまったりしたので
拙宅で飼い続けることは忍びなく思え、トライアルを中止にしました。
主人もやめるなら情がうつらない早いうちのほうが良いと私の性格もかんがみて
アドバイスをくれたので決断しました。
人間2人でちょうどのほどの空間で飼ってみてわかりましたが、
人間の生活環境を犠牲にしてまで動物を飼う必要があるのかなとも感じました。
主人の勉強机はじゅうたん貼りの寝室(ベッド横づけ)に移動し、使い勝手が悪くなったとも思います。
猫をリビングに出したとしても、ドアを閉めきっているので室内の空気の流れが淀んでいましたし、人間に影響がでないか、そして影響が出ないようにとこの先ずっと自分が気をつけていけるのだろうかという自信のなさ、自信がないけれど頑張ってみようという気持ちの強さも私にはありませんでした。
同じような子には二度と会えないと思いますが、
今後、諸々の不安を払拭できるような環境が整い、
おおらかな気持ちで動物と接することができるタイミングがやってきた日には
彼らから様々な癒しをもらえるのでしょうね。
一週間ではじめてのことを色々と経験させてもらいました。
昨日、保護主さんへのお返しは、譲渡会場まで連れて行きましたが、
なんと当日中に新しい里親さんが決まったそうで、それは本当にほっとしました。
彼女(♀です)の幸運がずっと続くようにお祈りをしているところです。
返信が遅くなり大変申し訳ありません。
トライアル中止にされたんですね。状況を伺っているかぎり、それがよかったのかもしれませんね。疑問を感じたまま飼い続けるのは難しいことだと思います。それはわが家も同じでした。
私も妻に言われたのですが、また縁があれば出会いもあるんじゃない?と。
当時は飼うことで頭がいっぱいになっていたので、今ではそのように考えています。部屋の片隅には捨てられないネコグッズが埃をかぶっていますが笑
今回のことはnekonekoさんにとってもすごく貴重な体験だったと思います。その間に猫ちゃんが与えれてくれたこともあったでしょうし、それがまた今後、何かの形になって現れたらいいですね。
たくさんのことをお話いただきありがとうございました。
私はいま猫を2匹飼っております。1匹目は前の猫が死んでから4ヶ月目に飼いました。
でも飼おうと思ったのは前の猫が死んだ次の日のことです。
飼おうとした当初は母と妹に猛烈に反対されておりました。当たり前ですね、死んだばかりなのですから。
そこで、1ヶ月かけてなんとか母を説得しました。そして次は妹を説得しようとしたその矢先に妹が感情を爆発させ、つかみかからんばかりの勢いで私に反抗してきたのです。「○○ちゃんが死んで1ヶ月しか経ってないのにお前の精神状態はおかしい!!」とまで言われ、それはもう半狂乱に等しいものでした。どうやらツイッターの検索で私のブログに辿り着き「母が猫に同意した」という記事を見てしまったらしいのです。
私はそれを見て「あと2ヶ月待とう」と思いました。2ヶ月ぐらい経てば妹のペットロスも落ち着くだろう。そう考えていました。
ところが2ヶ月経ったある日に「そろそろ猫を飼ってもいいか?」と聞くと「よくない。子供のころから全くペットの世話をしなかったあんたをなぜ信用しなければならないのか」と言われました。
そこで私は家を出る決意をします。そのとき私は病気で体を壊していて療養中でしたが、必ず猫を飼うと決めていたので家を出ようと思いました。
ところが不動産屋に電話をかけて内覧に行こうとした矢先に母から待ったがかかったのです。「私が妹を説得するから出ていくのは少し待ってほしい」と。そのあと1時間ほど母が妹を説得したら「私はもう知らない。飼いたいならあんたら2人で飼うがいい」と一応の同意を取り付けました。そこでブリーダーに連絡を取ってアメリカンショートヘアの子猫を1匹貰ってきました。
妹の部屋がある2階には猫を登らせないことと妹が1階に降りてきたときには猫を私の部屋に退避させること。特に明文化もしてないのに自然にこのようなルールが生まれました。
その後、2匹めを飼って今に至ります。2匹めのときには妹は特に何も言いませんでした。1匹目と妹の生活空間の棲み分けが上手くいっていたので何も言わなかったのでしょう。
ブログ主さんの気持ちはよくわかります。私も猫を飼いたくて暴走機関車のようになってました。それでも私が成功したのは
・前の猫を飼っていたので家族が猫に慣れていた
・最初に飼うのは1匹だけにした
・家族の説得に時間をかけた
・家族全員を同時に説得はしなかった。1人ずつ説得して母を味方につけた。
この4点が良かったかなと思います。
ブログ主さんの場合は最初から2匹飼ったのが大きな敗因になったと思います。1匹ならまだのぞみはあった。
1匹飼いと2匹飼いはやってみるとわかりますが、まるで違います。当然、2匹のほうが複雑で高度な管理を必要とします。慣れてない人が、ましてや家族が乗り気じゃないのに最初から2匹飼うのでは破綻は時間の問題だったかと。
成功例として書きました。
もし今後ブログ主さんが猫を飼うことがあるのなら、そのときは参考にしてください。
すごい経緯ですね。読んでいてハラハラしました。説得の難易度としてはわが家以上に大変な状況だったとお察しします。
わたしも今になって思うと、あのとき2匹でなくて1匹だったなら結果も違ったものになったのかなと感じます。これまで飼った経験がないのに最初から2匹というのはバーが高すぎました。譲渡主さんの多くは「1匹も2匹もいっしょです」と言われますが、それは経験がある人のことで、そうでない人にはあてはまりませんよね。今回はそのことを痛感しました。
またいつか猫を飼おうと思うようなことがあったらそのときは、お話いただいたことを参考に、あせらずにじっくりと行動してみようと思います。猫にとっても、人間にとっても、お互いが、それぞれいい関係を築けるようになれれば一番ですよね。
くわしい経験談をお話しいただき、ありがとうございました。
はじめまして。
猫の保護活動をしています。飼い猫は二匹います。
私は保護猫を譲渡するとき、トライアルは設けていません。
私個人の考えで命を引き受けることの重さ、簡単に返せると思って欲しくないとの考えです。
昔から猫は家につく。と言いますが環境が変わると慣れるまで数週間では難しいと思っているからです。
里親さんにも数ヵ月、一年と言う長い期間で見てあげてくださいとお願いしています。
トライアルが無いと言うことは簡単には返せず、責任が生まれます。
長い目でその子をみてあげられる余裕が出来ると思っています。
私は小さい頃から猫と暮らし、保護活動でもまたたくさんの猫と暮らしています。
なかなか飼ったことのない方の気持ちを想像することは出来ても、こんなにも不安なんだと改めて理解しました。
里親さんによって、柔軟に譲渡をした方が良いのかなぁ…と考えさせられました。
もちろん、どうしても難しいです。と言われた場合にはその日の内に引き取りに行っています。
試行錯誤の日々ですが、信念は持っていないと出来ないことだと思っていますが独りよがりにならないよう、気をつけようと思わされる記事でした。
ユウ様、このような記事を書いてくださり、ありがとうございました。
うーとーさんは保護活動をされているんですね。
わたしもこの数か月の間に、同じように活動している人たちとお会いし、皆さんの真剣さに頭が下がる思いでした。それだけに、わたしが猫を飼おうと決めた経緯は今になって思えばやっぱりちょっと甘かったのかなと思います。あまりにも自分本位で事を進めてしまいました。
返すことになるとはまったく想定していなかったにもかかわらず、結果的にこのようなことになってしまい、猫たちにはもちろんのこと、保護主様にも迷惑をかけてしまったことを今でも悔やむ気持ちとともに思い出します。2匹の写真を見ると今でも切なくなります。
コメントを読ませていただいて、保護活動をされている方の気持ちもよく分かりました。飼おうとする人以上に覚悟のいることと思います。譲渡するにあたっていろいろと厳しいことを言わざるを得ないのも当然ですよね。
この記事は最後の方は書きながらだんだん感傷的になってしまい、いま読み返すと恥ずかしいかぎりですが、あのときの素直な気持ちなのでこのままにしてあります。こちらこそお読みいただきありがとうございました。